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和食を支える昆布を知りたい

2013年に和食がユネスコの無形文化遺産に指定され、現在でも世界中で日本の伝統食が注目されています。日本を訪れる観光客にも大好評の和食ですが、その味の基本を作っているのが昆布。地味な存在ですが、和食には欠かせない大切な食材です。今月は昆布の種類、栄養などについてご紹介します。

 

●東洋と西洋の昆布の使い方

 

昆布はコンブ目コンブ科コンブ属の褐藻で、藻類の一種です。日本では12種類が知られ、世界にも20種類ほど存在しています。

東洋の昆布は豊富なうま味成分が含まれ、さまざまな方法で食文化に取り込まれてきました。日本では出汁を取るために使うのはもちろん、とろろ昆布、塩昆布、佃煮など、あらゆる食べ方が研究されています。また中国などでは炒めて食べる調理方法が一般的です。

一方、西洋では昆布を燃やして灰にして、ヨードやカリウム、せっけんの材料として活用してきました。また近年では昆布から抽出される水溶性食物繊維アルギン酸に、血中コレステロール値を減少させる作用があることが知られ、昆布消費も少しずつ増えています。

 

●昆布にはさまざまな種類がある

 

日本で生産される昆布には、幾つかの種類があります。主な産地は北海道ですが、北部で採れる「利尻昆布」は京風料理などに使われ、高級昆布として知られています。透明ですっきりした出汁がとれます。

北海道東部で採れる「羅臼昆布」は、香りとこくのある高級な出汁が取れる昆布として知られています。昆布締め、おしゃぶり昆布などにも活用されています。北海道南部でとれる「日高昆布」は家庭向きのお手頃な昆布です。出汁をとるのもよし、煮物に使ってもおいしく、おでん、佃煮、塩昆布など、さまざま食べ方ができます。

函館周辺の海域でとれる「真昆布」は、こくと上品な甘味のある素晴らしい出汁が取れ、最高級品として愛されています。高級日本料理店などで使われるのはもちろん、結納品の飾りにも欠かせません。「真昆布」で作るおぼろ昆布、とろろ昆布はまさに絶品のおいしさです。また同水域で水揚げされる「ガゴメ昆布」は、黒くて肉が厚く、表面に凸凹があるのが特徴です。とろろ分が多く、松前漬けなど、ぬめりを生かす料理に活用できます。

 

●年々減少する昆布の生産と消費量

 

水温が低く、浅い海に成育する昆布。国内生産量の95%は北海道産で、東北の太平洋側でもわずかに生産されています。生産者の高齢化や環境変化などで昆布の生産量は年々減少し、食生活の変化もあって消費量も減っています。また昆布で出汁を取って料理をする人の数も減り、粉末のだしの素を愛用する人が増えています。日本料理の基本の味が、家庭の中から少しずつ消えているのかもしれません。

 

以上、昆布の種類や利用法などについてご紹介しました。昆布はまさに日本の重要な食文化です。日常の中でどんどん活用したいですね。

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日本の着物を彩る染めの技術

普段、和服を着ない人でも、年末年始は袖を通すことがあるかもしれません。日本の着物は世界が憧れる伝統の美。洋服と異なり、平面的な形で、身につけると布の存在そのものが際立ちます。そこで今月は着物の華やかさを創りだしている独特の染めの技術について解説します。普段、あまり気にすることもなかった伝統の技法を知って、日本文化の奥深さを再確認しましょう。

 

●染めの技術の歴史

 

日本は弥生時代から織物が行われ、麻やコウゾ(クワ科の落葉低木)などの植物繊維を使って、衣類を作っていました。その後、中国から絹織物が伝播します。同時に高度な織りと染めの技術が流入し、日本の着物作りに大きな影響を与えています。

平安時代になると、貴族たちは着物を重ね着して、色彩の世界を深めていきます。その際、織り上げた布を染めるのではなく、織りの技術の進化で、複雑な文様を表現できるようになりました。錦や綴(つづれ)、緞子(どんす)など、さまざまな種類があり、現代でも能衣装や皇族の方々の婚礼衣装などに使われています。これらが上位の扱いを受けるようになり、染色は比較的、下位の技術として考えられていました。

ところが室町時代になると、応仁の乱などで京都の町が壊滅的被害を被ります。織物業の中心地が戦場になり、織機が失われ、織りの技術が一時的に衰退してしまうのです。そこで特別な織機がなくてもできる刺繍、そして手軽に作れる染めの技術が復興しました。

江戸時代になると、武士や貴族はもちろん、商人や農民も美しい着物に興味を持ち、それぞれに装うことを楽しみ始めました。現在の着物の原型である「小袖」が流行し、そのデザインを競い合う人たちも大勢出現しました。その結果、染めの技術もどんどん進歩し、より複雑な絵柄が表現できるようになったのです。

 

●絞り染めと型染め

 

日本の着物の染色で、もっとも代表的な技術が「絞り染」と「型染」です。です。「絞り染」は布の一部を糸でくくり、あるいは縫い締めて染料が行き渡らないように始末をした上で全体を染めます。あとで糸を解くと、その部分だけが白く残り、独特の模様ができあがります。絞り染は世界中で行われていますが、日本では技法も多く、染め方も非常に繊細で、まさに伝統の技術といえる存在です。全国に様々な絞りの技法がありますが、京鹿の子絞り、そして尾張藩の庇護の元に発達した有松・鳴海絞が代表的です。現在でも両地域では美しい絞りの着物が生産されています。

「型染め」は型紙を使って、布に文様を染めていきます。その際に使用する型紙でもっとも有名なのが「伊勢型紙」です。柿渋を使って和紙を貼り合わせたものに、刃先の細かい彫刻刀で繊細な絵柄を切り抜き、染色の道具として利用します。徳川紀州藩の庇護のもと、今の鈴鹿市白子地区で発達し、全国で愛用されました。現在では着物の生産が減ったこともあり、インテリア額など、美術工芸品としても愛好されています。

 

●京都生まれの友禅技術

 

振り袖などで多用され、誰もが目にしたことのある染めの技術といえば「友禅染」です。これは17世紀後半に京都で活躍した扇絵師・宮崎友禅斎の名前に由来する染め方で、友禅斎本人が考案したとされています。

友禅染は、まず下絵の上に米糊で細い線を引いて防染を行う(これを糸目という)ところからスタートします。その内側に色を塗り、細かな絵柄を描いていきます。色を差し終えたら布を高温で蒸して、色素を定着させます。その後、染めの部分に糊をのせて防染し、生地全体を染めてできあがり。最後に流水で洗って糊を落とします。きれいな川に反物を流して行う糊落としの作業が「友禅流し」と言われるものですが、現代では河川の汚れもあり、ほとんどが工房内で行われています。

 

以上、日本の染めの技法についてご紹介しました。年末年始の時期はぜひ着物を着て、日本の美しい染色技術を楽しんでください。

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日本の林業を取り戻す

明治時代から第二次大戦まで、日本は資源としての木材を次々と伐採し、終戦時には全国で150万ヘクタールもの荒廃地が広がりました。そこで1950?70年代にかけて次々と植林が実行され、約50年を経た現在、日本の山は緑の樹木に覆われています。とはいえ、一方で十分な手入れが行われず、不健康な状態で放置されている森林も増え、土壌流出などの危険性が指摘されています。そこで今月は日本の林業のいまと未来について解説します。

 

●利用できるまでに育った国産スギ、ヒノキ

 

一時期ははげ山が大量に出現していた日本列島ですが、現在は先人の植林作業のおかげで、世界有数の森林国になりました。国土に占める森林の割合は約2/3。面積にして約2500万ヘクタールにもなります。

そのうちの約4割は人が植林した人工林です。植えられている樹木の種類をみると、スギ44%、ヒノキ25%、カラマツ10%。利用しやすく、早く育つ、まさに資源としての樹種が選ばれているのがわかります。

これら人工林の樹齢を見ると、46年から50年くらいに育ったものが全体の半分を占め、戦後に植えた樹木が木材として利用できる状態になっているのがわかります。現在は輸入材が市場を占めているものの、ようやく収穫時期に入った日本の木の存在に改めて注目が集まっています。

 

●人工林には手入れが不可欠

 

樹木は育つまで30年40年の時間がかかります。その間、苗木は植えっぱなしではなく、さまざまな手入れが必要です。

まず植栽木に十分な日光が当たるよう、雑草、雑木などを切り払う下刈を定期的に行わなければなりません。また植栽木の成長を阻害する雑木や育ちの悪い植栽木の除去など、野菜や花の栽培と同様、「除伐」と呼ばれる間引き作業も欠かせません。

さらに一定年数が経ったところで、樹木の成長に応じて一部の木を伐採し、全体の立木密度を適度に調整します。これは「間伐」といいます。そして十分に育ったところで「主伐」(木を伐採し、木材として利用する)を行い、その跡地に再度森林の苗木を植えます。この一連の流れを数十年単位で繰り返していくのが、人工林の育て方と利用の仕方なのです。

ところが現在、この手入れを十分にされていない人工林が増え、さまざまな問題が指摘されるようになりました。下刈りや除伐などが不十分なため、日光が地面まで届かず、森全体が暗闇の様になってしまいます。下草が生えないので、自然の生態系が崩れますし、せっかく植林したスギ、ヒノキなどもひょろひょろとした細い材にしかなりません。その様子から「もやし林」などと呼ばれることもあります。

 

●日本の材木利用の促進

 

これほど大量かつ十分に育った日本の木材ですが、現状では利用がなかなか進んでいません。日本では1?5ヘクタール程度の山林を所有する小規模な山主が全体の75%を占め、私有林の約1/4は地元に居住していない不在村者が持っています。したがって重労働でもある森林経営に対して、意欲があまり高くない場合も多いのです。

また林道の密度も欧米に比べて非常に低く、伐採した木を下ろしてくる、新たに植林したり手入れをするなどの作業に林業用機械を入れにくく、効率アップがはかれません。今後はいかに林業の環境整備を行うかが重要な視点になってきます。

そして森林から遠い都市に住む人にとって、日本産材を生活の中で使うという意識は低いままです。外国からの輸入材とあまり変わらない価格の国産材も多いので、林野庁なども国産材の利用促進を訴えています。樹木の売買が盛んになり、林業にお金がまわるようになれば、自然と森の手入れも進み、現在は税金を投入して保全している森林も民間だけで維持できるようになるはずです。

 

以上、日本の森林と林業の現状を解説しました。今後は国産材を十分に活用し、林業をひとつの産業として自立させることが重要になってきます。私たちもさまざまな用途で日本メイドの木製品を使うよう、心がけたいものです。