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日本の着物を彩る染めの技術

普段、和服を着ない人でも、年末年始は袖を通すことがあるかもしれません。日本の着物は世界が憧れる伝統の美。洋服と異なり、平面的な形で、身につけると布の存在そのものが際立ちます。そこで今月は着物の華やかさを創りだしている独特の染めの技術について解説します。普段、あまり気にすることもなかった伝統の技法を知って、日本文化の奥深さを再確認しましょう。

 

●染めの技術の歴史

 

日本は弥生時代から織物が行われ、麻やコウゾ(クワ科の落葉低木)などの植物繊維を使って、衣類を作っていました。その後、中国から絹織物が伝播します。同時に高度な織りと染めの技術が流入し、日本の着物作りに大きな影響を与えています。

平安時代になると、貴族たちは着物を重ね着して、色彩の世界を深めていきます。その際、織り上げた布を染めるのではなく、織りの技術の進化で、複雑な文様を表現できるようになりました。錦や綴(つづれ)、緞子(どんす)など、さまざまな種類があり、現代でも能衣装や皇族の方々の婚礼衣装などに使われています。これらが上位の扱いを受けるようになり、染色は比較的、下位の技術として考えられていました。

ところが室町時代になると、応仁の乱などで京都の町が壊滅的被害を被ります。織物業の中心地が戦場になり、織機が失われ、織りの技術が一時的に衰退してしまうのです。そこで特別な織機がなくてもできる刺繍、そして手軽に作れる染めの技術が復興しました。

江戸時代になると、武士や貴族はもちろん、商人や農民も美しい着物に興味を持ち、それぞれに装うことを楽しみ始めました。現在の着物の原型である「小袖」が流行し、そのデザインを競い合う人たちも大勢出現しました。その結果、染めの技術もどんどん進歩し、より複雑な絵柄が表現できるようになったのです。

 

●絞り染めと型染め

 

日本の着物の染色で、もっとも代表的な技術が「絞り染」と「型染」です。です。「絞り染」は布の一部を糸でくくり、あるいは縫い締めて染料が行き渡らないように始末をした上で全体を染めます。あとで糸を解くと、その部分だけが白く残り、独特の模様ができあがります。絞り染は世界中で行われていますが、日本では技法も多く、染め方も非常に繊細で、まさに伝統の技術といえる存在です。全国に様々な絞りの技法がありますが、京鹿の子絞り、そして尾張藩の庇護の元に発達した有松・鳴海絞が代表的です。現在でも両地域では美しい絞りの着物が生産されています。

「型染め」は型紙を使って、布に文様を染めていきます。その際に使用する型紙でもっとも有名なのが「伊勢型紙」です。柿渋を使って和紙を貼り合わせたものに、刃先の細かい彫刻刀で繊細な絵柄を切り抜き、染色の道具として利用します。徳川紀州藩の庇護のもと、今の鈴鹿市白子地区で発達し、全国で愛用されました。現在では着物の生産が減ったこともあり、インテリア額など、美術工芸品としても愛好されています。

 

●京都生まれの友禅技術

 

振り袖などで多用され、誰もが目にしたことのある染めの技術といえば「友禅染」です。これは17世紀後半に京都で活躍した扇絵師・宮崎友禅斎の名前に由来する染め方で、友禅斎本人が考案したとされています。

友禅染は、まず下絵の上に米糊で細い線を引いて防染を行う(これを糸目という)ところからスタートします。その内側に色を塗り、細かな絵柄を描いていきます。色を差し終えたら布を高温で蒸して、色素を定着させます。その後、染めの部分に糊をのせて防染し、生地全体を染めてできあがり。最後に流水で洗って糊を落とします。きれいな川に反物を流して行う糊落としの作業が「友禅流し」と言われるものですが、現代では河川の汚れもあり、ほとんどが工房内で行われています。

 

以上、日本の染めの技法についてご紹介しました。年末年始の時期はぜひ着物を着て、日本の美しい染色技術を楽しんでください。