明治時代から第二次大戦まで、日本は資源としての木材を次々と伐採し、終戦時には全国で150万ヘクタールもの荒廃地が広がりました。そこで1950?70年代にかけて次々と植林が実行され、約50年を経た現在、日本の山は緑の樹木に覆われています。とはいえ、一方で十分な手入れが行われず、不健康な状態で放置されている森林も増え、土壌流出などの危険性が指摘されています。そこで今月は日本の林業のいまと未来について解説します。
●利用できるまでに育った国産スギ、ヒノキ
一時期ははげ山が大量に出現していた日本列島ですが、現在は先人の植林作業のおかげで、世界有数の森林国になりました。国土に占める森林の割合は約2/3。面積にして約2500万ヘクタールにもなります。
そのうちの約4割は人が植林した人工林です。植えられている樹木の種類をみると、スギ44%、ヒノキ25%、カラマツ10%。利用しやすく、早く育つ、まさに資源としての樹種が選ばれているのがわかります。
これら人工林の樹齢を見ると、46年から50年くらいに育ったものが全体の半分を占め、戦後に植えた樹木が木材として利用できる状態になっているのがわかります。現在は輸入材が市場を占めているものの、ようやく収穫時期に入った日本の木の存在に改めて注目が集まっています。
●人工林には手入れが不可欠
樹木は育つまで30年40年の時間がかかります。その間、苗木は植えっぱなしではなく、さまざまな手入れが必要です。
まず植栽木に十分な日光が当たるよう、雑草、雑木などを切り払う下刈を定期的に行わなければなりません。また植栽木の成長を阻害する雑木や育ちの悪い植栽木の除去など、野菜や花の栽培と同様、「除伐」と呼ばれる間引き作業も欠かせません。
さらに一定年数が経ったところで、樹木の成長に応じて一部の木を伐採し、全体の立木密度を適度に調整します。これは「間伐」といいます。そして十分に育ったところで「主伐」(木を伐採し、木材として利用する)を行い、その跡地に再度森林の苗木を植えます。この一連の流れを数十年単位で繰り返していくのが、人工林の育て方と利用の仕方なのです。
ところが現在、この手入れを十分にされていない人工林が増え、さまざまな問題が指摘されるようになりました。下刈りや除伐などが不十分なため、日光が地面まで届かず、森全体が暗闇の様になってしまいます。下草が生えないので、自然の生態系が崩れますし、せっかく植林したスギ、ヒノキなどもひょろひょろとした細い材にしかなりません。その様子から「もやし林」などと呼ばれることもあります。
●日本の材木利用の促進
これほど大量かつ十分に育った日本の木材ですが、現状では利用がなかなか進んでいません。日本では1?5ヘクタール程度の山林を所有する小規模な山主が全体の75%を占め、私有林の約1/4は地元に居住していない不在村者が持っています。したがって重労働でもある森林経営に対して、意欲があまり高くない場合も多いのです。
また林道の密度も欧米に比べて非常に低く、伐採した木を下ろしてくる、新たに植林したり手入れをするなどの作業に林業用機械を入れにくく、効率アップがはかれません。今後はいかに林業の環境整備を行うかが重要な視点になってきます。
そして森林から遠い都市に住む人にとって、日本産材を生活の中で使うという意識は低いままです。外国からの輸入材とあまり変わらない価格の国産材も多いので、林野庁なども国産材の利用促進を訴えています。樹木の売買が盛んになり、林業にお金がまわるようになれば、自然と森の手入れも進み、現在は税金を投入して保全している森林も民間だけで維持できるようになるはずです。
以上、日本の森林と林業の現状を解説しました。今後は国産材を十分に活用し、林業をひとつの産業として自立させることが重要になってきます。私たちもさまざまな用途で日本メイドの木製品を使うよう、心がけたいものです。