5月上旬は一番茶の採れるシーズンです。日本各地にはそれぞれおいしいお茶がありますが、中でも代表的な静岡茶の魅力についてご紹介します。
●国内生産量の半分は静岡茶
日本には各地にお茶の産地があります。京都の宇治茶などは有名ですが、生産量はそれほど多くはありません。国内ナンバーワンの産地といえば、なんといっても静岡県。ちなみに第2位は知覧茶などが有名な鹿児島県です。
静岡県は地理的にも環境的にもお茶の生産に適していて、古くからの名産地として知られています。1853(嘉永6)年にアメリカからペリー提督ひきいる黒船が来航。これをきっかけに1859(安政6)年、横浜港が開港し、生糸と茶の輸出が非常に盛んになりました。このため横浜に比較的近い静岡各地に茶園が開かれ、生産性をあげる方法や品種改良が進んだのです。
現在でも日本の茶の生産量の約50%は静岡茶で、流通面では7割を占めています。まさに日本を代表するお茶といってもよいでしょう。
●お茶には多くの品種がある
米にはササニシキやコシヒカリなど、多くの銘柄があります。お茶にも同様、さまざまな品種があるのをご存じでしょうか。
もっとも有名なお茶の品種というと「やぶきた」茶です。この茶は静岡県出身の篤農家・杉山彦三郎がさまざまな選抜育種試験の結果、1908年に発見した種類で、深い香気を持ち、一番茶の収穫が早いという特徴があります。「やぶきた」という名も杉山が名付けたもので、所有する竹藪を切り開いて作った試験園の北側の位置に原茶樹があったから。この発見から約半世紀後の1953年、農林省の奨励品種に指定されたのをきっかけに全国的に栽培されるようになり、現在は全国の約8割の茶園で採用されています。
日本茶の銘柄としては「やぶきた」のほか、明るい緑色のお茶がでる「つゆひかり」、渋みが少なく旨みの強い「さえみどり」「山の息吹」など、色や香り、味に特徴のある品種が作られています。
●機械でもおいしいお茶の加工
明治時代までは、すべて手揉みの手作りで作られていた緑茶ですが、現在では先進的・衛生的な製茶機械が取って代わっています。
機械とはいえ、その製造工程はなかなか複雑です。茶畑から収穫された茶葉を給葉機から蒸機に送り、強い蒸気にさらして酸化酵素の働きを止めます。そして茶の表面にたまる水分を除きながら、冷却機でいったん冷まします。次に粗揉機(そじゅうき)と呼ばれる機械に入れ、強い力で揉みながら熱風を当ててかわかします。さらに揉捻機(じゅうねんき)で水分が均一になるよう揉んでいきます。中揉機(ちゅうじゅうき)に移し、さらに茶を揉みながら熱風で乾かします。この後、精揉機(せいじゅうき)で茶葉の形を整えながら乾燥させ、乾燥機でさらに水分を飛ばし、荒茶合組機(あらちゃごうぐみき)で全体を均一に混ぜてできあがりです。
この段階の茶は「荒茶」と呼ばれ、このあと、さらに茶葉の大きさなどで分類し、火入れや選別を行って「仕上げ茶」を製造します。手作りに比べれば、ぐっと生産効率が高いのですが、やはり製茶には手間暇がかかっているのです。
以上、静岡茶の魅力についてご紹介しました。新茶の季節はぜひ、急須でいれた美味しいお茶で気分をリフレッシュしたいですね。