来月には日ロ首脳会談が予定され、新しい外交関係を模索するロシア。同国の有名な民芸品土産というと、マトリョーシカを思い出す人も多いのでは。実はこの木彫りの人形、出身地は日本だったとか。世界に愛されているマトリョーシカの秘密を探ります。
●マトリョーシカは箱根の生まれ
1900年、パリで万国博覧会が華やかに開催されました。パリ・オリンピックと同時開催ということもあり、過去最大の4700 万人が入場。エッフェル塔にはエスカレーターがとりつけられ、この万博を機に、世界へ広がっていったと言われています。
ロンドン留学中の夏目漱石も訪れたというパリ万博ですが、このとき、ロシアもさまざまな芸術品を出品しました。その中のひとつにマトリョーシカがあったのです。その愛らしい姿と、いくつもの人形が入れ子になって入っている様子が評判を呼び、フランスをはじめ各国からたくさんの注文が舞い込みました。そしてマトリョーシカはロシアを代表する民芸品となったのです。
ところが、この人形は昔からロシアに伝わる伝統品ではなく、実は日本が発祥に地だと言われています。1890年代、神奈川県足柄下郡箱根にあったロシア正教会に遊びに来ていたロシア人が、入れ子式になった七福神のこけしを母国へ持ち帰りました。その後、モスクワ近郊の芸術家が集まる村で作られたのが始まりだと考えられています。
●マトリョーシカはロシアの女の子の名前
マトリョーシカの素材は白樺と菩提樹を使いますが、樹木は切り出しから2、3年ほど寝かせて、しっかりと乾燥させます。
この入れ子の人形たちはお腹のあたりで、パカッと2つに分かれますが、上下異なる種類の樹木を使います。上は少し水分を帯びて柔らかく、下はしっかり乾燥させて堅牢に仕上げることで、上下がちょうどフィットするのです。
マトリョーシカという名前は革命以前のロシアで流行した女の子の名前だという説、「シカ」は愛称で、「マトリョーナちゃん」という意味だという説もあります。
入れ子の数はさまざまですが、3個組み、5個組み、7個組み、10個組みなどが一般的です。頭巾をかぶり、サラファンと呼ばれる民族衣装を身につけています。手には子孫繁栄を意味する鶏を抱いたり、パンやかご、野菜や果物、ワインを持ったりする絵柄が多く、地方の特徴がよく現れています。
●直射日光と湿気に要注意
せっかくかわいいマトリョーシカを購入したら、大切に保管したいですね。直射日光のあたる場所にマトリョーシカを置くと、変色したり、ひび割れが起こることがあるので注意しましょう。湿度の高い場所だと、マトリョーシカの上部と下部がはずれなくなることも。湿度の低い場所に保管するのが無難です。
またマトリョーシカを開けるときは、ネジのようにくるくる回すのは厳禁です。下から上へ押し上げるように、ゆっくりと上半身側を外しましょう。また上下をはずしたまま放置すると、合わなくなることもあるので保管には気をつけてください。
以上、マトリョーシカについて解説しました。愛らしい姿のロシア風こけしですから、たくさん並べて飾るのも楽しいものです。どこかで見かけたら、ぜひ手にとって見てください。