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化粧水の意外な歴史

毎日の洗顔後、習慣のように使っているのが化粧水です。角質層に水分を与えて肌を柔らかくし、毛穴を引き締める機能があり、アンチエイジングや美白などの成分を配合した製品が人気です。また最近は男性用化粧水も多数、販売され、肌のコンディションを気にする男性たちにとっても身近な存在に。そこで今月は化粧水の意外な歴史をたどってみましょう。

 

●化粧水の起源は古代ギリシャ・ローマから

 

化粧水の歴史をたどると、もっとも古い記録は古代ギリシャ・ローマ時代にさかのぼります。紀元前50年頃、エジプト女王クレオパトラが、バラのエキスが入ったバラ水を愛用し、バラ水の風呂に浸かっていたことは有名です。また

紀元前77年頃に編纂された古代ローマの植物学者・プリニウスによる大著『博物誌』にもバラの効能が記され、バラを利用して作る30種類以上の薬剤が紹介されています。その中にはバラ水についての記述があり、体を清めるために使っていたようです。

時代が下って、1300年代になると、ハンガリー王妃エリザベートが使ったハンガリー・ウォーターがヨーロッパ各地に広がり、18世紀頃まで愛され続けました。1775年発行の本『花による化粧法』によると、ハンガリー・ウォーターはローズマリーやマジョラムなどを蒸留して作り、肌につけると若々しい雰囲気になると書かれています。

 

●手作り化粧水の時代

 

19世紀に入っても、ヨーロッパでは相変わらず化粧水が人気のアイテムでした。当時、化粧品は手作りするのが当たり前ですから、さまざまなレシピが流布しました。

たとえば1832年にイギリスで発行された本『ザ・トイレット・オブ・ヘルス、ビューティー・アンド・ファッション』にはデンマーク・ローションと称して、若い頃の美しさを50歳代まで維持できるという化粧水の作り方が載っています。睡蓮、メロン、キュウリ、薬草などに加えて、8羽の鳩を煮込んだシチュー、ホウ酸、樟脳、砂糖、フランスパンの白身、白ワインを混ぜて17?18日置き、蒸留すると「ピジョン・ウォーター」が完成です。これは別名デンマーク・ローションといい、デンマーク人が昔から使っていたものとされています。

化粧水は英語でローションと呼ばれることが多いのですが、日本の化粧水のように洗顔後に使うというより、ふきとり化粧水のように使われることが多かったようです。

 

●日本の化粧水の歴史

 

日本でも化粧水の歴史は古く、11世紀頃に成立した『枕草子』に「菊の露」についての記述があります。9月9日の重陽の節句前夜、菊の花に真綿をかぶせ、朝になったら真綿にしみこんだ菊の露で肌を清めると、長命になると言われていました。

江戸時代にはヘチマから採ったヘチマ水が美肌を作ると評判になり、江戸城大奥へ献上されていたようです。また『浮世風呂』などで有名な戯作者・式亭三馬は執筆のかたわら、売薬店をひらき、自作の化粧水「江戸の水」を発売。これを使うと白粉

がのりやすく、化粧崩れしにくいと大評判になりました。化粧の前に肌を整える意味で使うというのが、今の化粧水にも通じているかもしれません。

 

以上、西洋と日本の化粧水の歴史をたどってきました。肌を美しく保つために、世界中の人々が創意工夫した歴史があって、現在の豊かな化粧水ラインナップに繋がっている。そう思うと、朝晩に使う化粧水がなんだか愛おしくなるような気がしますね。