近年、スーパーに行くとエコバッグを持参している人を、よく見かけるようになりました。また店舗によっては、レジ袋が有料になる場合も珍しくありません。そんな中、日本にはふろしきという大変便利なエコバッグが存在し、再び、この四角い布の活用方法について注目されています。そこで今月は知っているようで知らなかった、ふろしきの基礎知識を解説します。
●ふろしきで包む文化は江戸時代から
「風呂敷」という言葉は奈良時代から存在していました。当初は蒸し風呂に入るとき、熱さをよけるため、すのこの上に敷く布という意味で使われていました。平安時代後期になると、布に包んだ衣類を頭上に載せて運搬している人の絵姿が描かれ、「衣づつみ」「平包み」と呼ばれていたことが知られています。
そして今、私たちが頭に浮かべるふろしきが誕生したのは、江戸時代になってから。当時、銭湯が営業を開始し、庶民は着替えや軽石、ぬか袋(石けんのかわりに使うもの)などを風呂敷に包んで持ち運ぶようになりました。また銭湯で着物を取り違えないよう、風呂敷に家紋や屋号、名前などを染め抜くようになり、風呂敷の世界も奥行きを増していきました。
江戸後期の国学者・久松裕之が著した『近世事物考』に「寛保の頃より平包の名はうしないて、物を包む布を、皆ふろ敷と云なり」とあります。昔から使われてきた「平包み」という言葉が、この頃からだんだん「風呂敷」に変化していったと考えられます。
●ふろしきの大きさは決まっている
伝統的に、ふろしきには決まった大きさがあります。もっとも小さな小幅(約35センチ角)から、中幅(約45センチ角)、二幅(約80センチ角)、二・四幅(約90センチ角)、三幅(約100センチ角)、四幅(約130センチ角)、五幅(約180センチ角)、六幅(約200センチ)、七幅(約238センチ角)まで各種類があり、それぞれ包むモノが異なります。
小幅・中幅は金封や弁当箱、二幅は菓子折、三幅はもっとも使いやすい大きさで、様々なものを包むことができます。四幅は座布団4枚、五幅は座布団6枚、六幅は布団1組、七幅は布団2組を包むのに最適な大きさで、日本人の生活のあり方にぴったりとマッチしています。
●今の暮らしにあった使い方
現在、ふろしきは実用品というより、贈答品のような扱いが多いかもしれません。しかし昔と変わらず、冠婚葬祭で金封を包むにとても便利ですし、使い方によってはエコバッグにもなります。
自分用のきちんとしたふろしきを持っていないなら、最初の1枚には紫色のものを購入することをお勧めします。紫は結婚式でもお葬式でも使えるオールマイティーな色で、使い勝手がよいのです。ただし蓮の絵柄は仏事用ですから、それ以外の柄を選びましょう。
ちなみに「泥棒が使うふろしき」というイメージの唐草模様は「つるがどこまでも発展して伸びていく」という意味。非常におめでたい柄なのです。
以上、ふろしきの由来やサイズ、使い方などをご説明しました。暮らしの中にふろしきを取り入れてみるのも楽しいですね。ぜひお試しください。